うまいラーメン屋の「紹介の仕方」◎
By 偽由実 (埼玉県)
まず「旭川醤油系」や「佐野系」、「油そば系」など、“1年で47都道府県の「麺」を食べ歩く”著者ならでは!と言える全国のご当地ラーメンに関するきめ細かな歴史・特徴・近年の傾向が紹介されます。
以降は、このカテゴリーに沿って「都心」から「多摩・神奈川」、「千葉・埼玉」の各エリアごとに、フードジャーナリスト&全や連東京名誉館長・はんつ遠藤先生の“おメガネにかなった名店”が、全店見開き(2P)の“特盛り”級の情報量で、掘り下げられます。
たとえば、埼玉・新座の塩ラーメンの名店「ぜんや」は、店主さんが通産省を退職・独立後にラーメン修業。苦悩と葛藤の日々まで紹介。
単なる「お店紹介」の枠を超え、読み進めるほど心にさわさわと、その“想い”が迫ってくるよう◎
全篇にわたり、著者のはんつ遠藤先生の紹介するお店や人への“想い”の入れ具合が感じ取れる1冊♪
そして、取材の中でお店の方の「ひとこと」を効果的に文中に使っていて、サラリと読めるけれど、後でじわじわ旨味が湧いて来る...
まるで“無化調ラーメン”のような味わいもgood◎
個人的には、以前地域サイトの取材でうかがったことがある「うだつ食堂(P100~101)」が、印象に残りました♪
「うだつ食堂」は都内唯一の“徳島ラーメン”の名店なのですが、生卵&まろやかな豚骨醤油スープ&白身魚のすり身フライ(フィッシュカツ)と、とにかく “まろやかでカドがない”味わいであるところを...「ほんのり甘めで○○○○◯○◯○...」と、はんつ遠藤先生はうまい「ひとこと」でしめています。
ラーメンは改めて奥が深い食べ物ということ。
そして、ラーメン店の店主さんは、どの方も思い思いに、ラーメンにかける「想い」を1杯で表現している……ということが読後感に残りました◎
数あるはんつ遠藤先生作品の中でも、間違いなく一、二を争う完成度の1冊♪