嘘のような、『SWEET DREAMS』にまつわる真実。
ユーミンの『SWEET DREAMS』の歌詞の中には、「この電話が最後かもしれない♪」というフレーズがあります。
私には、この歌詞が「真実」になった恋がありました。
今から18年前ーー私が高校1年生、15歳の頃の話です。
当時「山手のドルフィン」で知られる根岸台から「山手教会」を過ぎ、少し行った丘の上に住んでいました。
山手の丘を下り、根岸方面に進んだ「本牧」という地のマクドナルドにて、その年の夏休みの間アルバイトしました。
私はキッチンでポテトを揚げたり、荷物を出したり、ハンバーガーをせっせと作っていました。
彼女はカウンターで接客担当。山手のアメリカンスクールに通う同い年でバイリンガルでした。彼女はあくまで「バイト仲間」として休憩室で一緒にランチを食べたり、軽く談笑する程度の仲でした。
ひと夏だけのバイトは終わり、9月から新学期になり、マクドナルドのアルバイトも辞めることになりました。
新学期になり10月も近づいた「9月の蝉しぐれ♪」な、ある朝の通学路。
いつものように、駅まで自転車で全力疾走していると、遠くで大きく手を振る子がいました。
自転車を止めると、マクドナルドでバイト友だちだった彼女がいました。
聞くと、山手のアメスクに通う彼女と私の利用駅は同じで、通学路まで
同じとか。よく私のことを見かけていたと言うのです。その日は、どうしても伝えたいことがあり、私のことを「まちぶせ♪」していたというのです。
そして、最後に少し顔を赤らめながら、「手紙書いたんだけど、読んで」とひとこと。スッと封筒を差し出しました。
私は、「何もなかったように♪」少しカッコつけて受け取り、別れました。
学校で授業中、まわりから見られないよう教科書を立てながら手紙を見ると、
「バイトしているときから、ずっと好きでした。よければ付き合ってください。もしokなら今日と同じ所に7時45分に来てください」とありました。
その日、友人にも親にも相談することもなく、考え続けました。バイトのマックでは、あくまで「友だち」でしかなく、あまり彼女のことを深く知りませんでした。それだけに「なぜ僕なんだろう?」とも思いましたが、マックのカウンターでいつもにこやかにお客さんと接し、時に外国人の方と英語で応対する姿が可愛くもあり、かっこいいな、とも思っていました。
付き合うことを決め、明くる朝、約束の場所で彼女を待ち、私達は正式に付き合い始めました。「初めての恋」です。
デートはユーミンが当時やっていた「THE DANCING SUN TOUR」に行ったり、カラオケボックスや映画館などに行ったりしました。そんな他愛のない日々が過ぎた、冬・2月のある夕間暮れ。
自宅の電話が鳴り、電話に出ると、いつもより少し暗い彼女の声がありました。
話して少しすると、急にトーンが一変。「付き合ってくれてありがとう。でも、もう私もう別れたいんだ……」と切り出されました。
私が「なんで?」と返すと、ただただ受話器向こうで泣き、嗚咽する彼女の声が、何度も何度も、リフレインしていました。。
HD YUMING リフレインが叫んでる
そのとき、たまたま部屋でかけていたのが、ユーミンの『SWEET DREAMS』でした。
というのも、その1カ月ほど前に行ったコンサート「THE DANCING SUN TOUR」でミラーボールの上でユーミンが歌っていたのを、彼女と「すごいね〜!ユーミンミラーボールの上にも乗れるんだ!」と言い合い、それ以来曲の虜になっていたからです。
毎日リフレイン♪して聞いていたのです。
曲のイントロが終わり、「この電話が最後かもしれない 他人事に思える 涙だけあふれて……♪」という歌詞にさしかかったとき、彼女が大泣きを始め、言葉にならないやり取りが始まりました。。
かつてない状況に、恋愛ビギナーだった私は戸惑い、満足に言葉を返すことも出来ず、本当に歌詞の通りに「他人事に思え、涙だけあふれて」来てしまいました。。
重い沈黙がその後10分程度続き、「もう切るね」と何度も言いながら、すぐに受話器を置けず、沈黙を引きのばそうとする自分がいました。。
何をしてしまったのかわからないけど、淡い罪悪感のようなものが走り、できるなら時を巻き戻したい♪気持ちで、何度も何度も、「もう切るね」という言葉を繰り返していました。
『SWEET DREAMS』も終わり、『ダイヤモンドダストが消えぬまに』も6曲目くらいになっていたでしょうか。。
意を決し、「また連絡するね」とひとこと。受話器を置いたのですが、結局、それ以来もう一度連絡することはありませんでした。。
人とつき合うということがどういうことなのか?ーー本当に好きだったのかどうかもわからなかったけど、ひとり取り残された部屋には、「写真立てにはおどけて笑う二人」がいました。
その写真は、少し背伸びをして、近所の山手の「ドルフィン」で撮ったときのものでした。ソーダ水の歌詞のように、それはそれは儚い恋で、「小さな泡も 恋のように消えて行った♪」というほど、あっけないものでした。
あれから18年。私もいい年になり、「婚活」だのに精を出す年齢になりました。
今、このエピソードをしたためていて思うのは、ユーミンの曲『静かなまぼろし』の「昔の恋を懐かしく思うのは、きょうの自分が幸せだからこそ♪」ということ。
初恋の彼女が今どうしているのか?名前もフルネームで思い出せないほど、遠い昔になりましたが、どこかで元気にしていてほしい、と今本当に思います。
ユーミンの歌詞のままに、泡のように過ぎた初恋……本当に『ダイヤモンドダストが消えぬまに』というくらい、とても短い、短い時間でした。
今こうして『SWEET DREAMS』を聞き、懐かしく思えるのは、私が大人になり、幸せだからなのかもしれません。
横浜に彼女といた、15歳の夏。
『Hello,my friend♪』という位カジュアルにつき合い始め、『SWEET DREAMS』で終わった恋でした。。でも、『SWEET DREAMS』という名曲があることで、私のそんな「初恋」も永遠に胸に焼きつけてゆけます☆
ユーミンの「音楽」という魔法は、私ならずとも、すべてのゆみとも※(※ユーミン友だちの略)のどんな過去にも、「永遠の命」をくれます。
ありがとう☆
Good-bye friend♪ではなく、ずっとHello,my friend♪で☆
そして、これからも、私たちゆみともに、すてきな魔法をかけ続けてください。